西武百貨店池袋店ストライキの原因と真相。当日の様子

セブン&アイ・ホールディングスそごう・西武百貨店労組の間のせめぎ合いが、ギリギリのところで行われている。そごう・西武百貨店労組は7月に組合員投票でスト権を確立したうえで、8月31日に西武百貨店池袋本店でストを決行、日本では61年ぶりの百貨店のストという誰も予測できない事態に進行したことで、ここ数日はストの影響についての報道が繰り返されていた。私もメディアで西武百貨店がどうなるのかについてコメントする機会が増えていたのだが、実は、この問題の本丸はセブン&アイHDが抱えてきた経営問題にある。

 同日セブン&アイHDは臨時の取締役会を開催し、本日9月1日にそごう・西武を売却することを決定。

「もしそごう・西武が売却できなければ、セブン&アイの井阪隆一代表取締役社長の再任はない」。セブン&アイ側がこのような瀬戸際に追い込まれているのが、今回の騒動の本質であった。そごう・西武の組合とセブン&アイの間に決定的な溝が入ったのは、今年8月初旬、

 従業員の立場を考え、売却を慎重に進めたいとしてきた生え抜きの林拓二社長が解任されたのが最初の事件です。その後、セブン&アイの意をくむ田口広人新社長と組合の間で初めて、売却後の事業計画が提示されたのが、それに続く事件であった。

 その計画について複数のメディアの報道から明らかになったのは、次のような内容だったとされている。

(1)アメリカの投資ファンドフォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)」がそごう・西武百貨店の株式を取得後、西武百貨店池袋本店の土地を家電量販店「ヨドバシカメラ」に売却する
(2)西武池袋店の北側にヨドバシカメラが入ることで、西武百貨店の売り場は半減する(ただし当初の計画のうち、ヨドバシの西武池袋1階および地下1階への出店は豊島区との協議を経て一部断念) というのも昨年、セブン&アイそごう・西武を売却することを決定した際は、セブンとそごう・西武は「百貨店事業の再成長を目指す」という方向性で一致していて、そのパートナーとしてのファンドを探していた。入札を経て、実際に優先権を得たファンドの事業計画は、そごう・西武最大の財産である池袋駅前の土地を売却してもうけるという「そごう・西武解体計画」だったわけだ。

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◯売却理由

今、百貨店業界はある意味で二極化していて、地方百貨店は次々と閉店する一方で、大都市圏の旗艦店はインバウンドと富裕層の増加によって成長産業になっています。高島屋三越伊勢丹J.フロント リテイリングなどが好業績を上げる中で、この波にいま一つ乗れていないのがそごう・西武という状況。

今回の他社へこ売却計画は、セブン&アイ投資ファンドのフォートレスの立場で見れば一定の合理性を持っている計画でもある。2022年度のそごう・西武の業績は総額売上高4963億円に対して営業利益は25億円と3期ぶりの黒字となった。一方で、純利益はマイナス131億円の赤字。経営の足を引っ張っているのが、3000億円を超える有利子負債だとされている。そこで、買収と同時に西武池袋本店の土地を売却するとする。そごう・西武保有するのは池袋店の土地の半分(残りの半分は西武鉄道グループが保有)だが、仮にその土地が2500億円で売れれば有利子負債は大幅に減少し、そごう・西武は黒字体質に変わることができます。計画書上は完璧な理論なので、「これでいける」と思うのも仕方ない。

 

◯今回の騒動が大荒れした理由

①「テナントの猛反発」です。百貨店のテナントである高級ブランドにとって入居している場所が非常に重要です。

 これは全てのブランドにとっても言えることで、これまで長い間一等地で商売をやっていて、顧客に認知され来客も非常に多かったとすると、そこにある日、新しい大家がやって来て“別の場所に移れ”と言ったとしてと、当然、抗議をしますよね。

 メディアの報道でリークされたとおぼしき買収後のフロアマップを見ると、たとえば今、ルイ・ヴィトンの店舗がある場所にはアップルやライカの名前が書かれています。本館の1Fで営業しているグッチは本館から追い出され、別のビルに移っている。

 

②「優秀な社員の退職」

 セブン&アイの得意領域であるコンビニをITビジネスだとすれば、百貨店は人間ビジネスだということです。事業特性が違うのです。従業員の間のウエットさが違うといってもいいかもしれません。

 今回、西武池袋本店の売り場面積がほぼ半減することで900人の正社員も相応の数の人たちが職場を失うことになります。セブン&アイはそれに対する雇用を用意することを表明していますが、用意される職場は百貨店の仕事ではありませんし、コンビニの店長かもしれません。

 もし計画通りそごう・西武の解体が始まったら、たとえば私が外商の従業員だったらとっとと他社に転職します。腕のいい外商の従業員はどの百貨店でも欲しいものです。インバウンドの接客ができるバイリンガルの従業員も同じです。大手百貨店は人間ビジネスの成長産業ですから、できる社員はどの大手もウエルカムでしょう。

 それでそんなことが起きると、他の百貨店との差がますます開きます。

 この7月まで労組の再三の要請にもかかわらず対話をしてこなかったところを見ると、セブン&アイは計画がもれると優秀な社員が転職していくという点には気づいていたのかもしれません。

 

2023.8/31

至るところ西武池袋本店の広告にストライキによる営業休止の貼り紙があります。

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西武池袋本店のサイネージにもストライキのお知らせが貼られています。
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朝の9時あたりです。この時間は労働組合が抗議活動を行なっていました。

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11時過ぎあたりから西武本店の職員たちが出てきてストライキの声明を発表。抗議活動の様子です。

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今回は以上です。

https://m.youtube.com/channel/UCPdXGJwZ5cgnldp0DhoTI9g